FC2ブログ

記事一覧

ミドリムシ(ユーグレナ)でCO2削減ができるのか?Yahoo知恵袋での質問・回答を踏まえて

再生可能エネルギーのひとつに、バイオマスエネルギーがある。これはバイオマス(生物由来の有機性資源で化石燃料を除いたもの)を燃焼させてエネルギーを取り出す方法である。バイオマスの燃焼によってCO2は発生するが、バイオマスは成長過程で光合成により大気中からCO2を吸収するので、バイオマスを燃焼させても全体としてみれば大気中のCO2は増加しない(カーボンニュートラル)。

バイオマスには様々なものがあるが、今回話題にするのは「ミドリムシ(学名:ユーグレナ)」である(なぜミドリムシを選んだかの理由は後述)。ミドリムシは光合成を行う単細胞の植物であるが、鞭毛運動をする動物的な性質も持つ。

ミドリムシの大量培養は困難とされて来たが、2005年に(株)ユーグレナ(以下、ユーグレナ社)が世界で初めて大量培養に成功した。ユーグレナ社は堀江貴文氏のライブドアから出資を受けて事業を開始したが、ライブドア事件により取引先がユーグレナ社から手を引いてしまい、事業存続の危機に面した。しかし、その危機をぎりぎりで乗り越え、2012年に上場するとアベノミクスを象徴する人気銘柄になった(事業内容は食品販売や化粧品販売とバイオ燃料の研究開発。ユーグレナ社のHP→http://www.euglena.jp/)。

http://diamond.jp/articles/-/7119 によると、ミドリムシは成長過程において熱帯雨林の数十倍のCO2を吸収・固定化するとされている。
ミドリムシ_CO2吸収量_20180409 
また、ミドリムシは培養液中に大量のCO2を送り込めば光合成が活発化し、収量が増えることが分かっている。他の藻類は大量のCO2にさらすと成長が阻害されたり死滅したりするが、ミドリムシは通常の350倍の濃度まではOKで、収量が通常の30~40倍に増えるという(→情報元リンク:日経新聞2012年の記事)。

こうしたミドリムシの特性を利用してCO2削減が出来れば良いのだが、現在のところミドリムシがCO2削減に活用されているとは言い難い。

https://nge.jp/2015/03/02/post-97258 ではユーグレナ社長の出雲充氏が「炭素循環社会をミドリムシで構築する」と発言しているが、出雲氏の提案する「火力発電→発生したCO2をミドリムシに取り込む→ミドリムシをバイオ燃料化→バイオ燃料を燃焼」というプロセスでは結局、火力発電で発生したのと同量のCO2がバイオ燃料の燃焼で生じる。これでは炭素循環社会とは言えない(化石燃料の有用利用、CO2発生原単位を下げる効果はあるが)。

ここで僕は次のような思考実験を行った:「ミドリムシでCO2吸収→バイオ燃料化→燃焼→生じたCO2をミドリムシが吸収」というミドリムシ・サイクルを回すことにより、CO2マイナスエミッションでエネルギーを得ることが可能になるのではないか?ミドリムシは燃焼させてもカーボンニュートラルなのだから、燃焼で生じたCO2を培養液に戻してミドリムシに吸収させれば、マイナスエミッションになるのではないかという理屈である。これが実現可能なら画期的である。

しかし、僕はバイオマスの分野には疎いので、Yahoo知恵袋でこのアイディアが実現可能かについて質問してみた。

この問題は意外と難しく、回答者にも「原理的に可能」という人と「原理的に不可能」という人に分かれた(質問・回答のやり取りは →https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/都雄次質問 で見ることが出来る)。

議論の流れは概ね以下の通りである:
  • (回答者)普通にはマイナスエミッションにはならない。ミドリムシも生物である以上、そのまま放置しておけば腐敗分解してCO2や水に戻される。マイナスエミッションにするには、例えば得られたミドリムシの一部を地球深くに埋める等により自然の循環から切り離す必要がある。
  • (ブログ主)「ミドリムシはいずれ死んで炭素が大気に戻る」と考えると、一見、マイナスエミッションにはならずカーボンニュートラルにしかならないように思えるが、「ミドリムシの死滅率<ミドリムシの増殖率」であれば、「ミドリムシでCO2吸収→バイオ燃料化→燃焼→生じたCO2をミドリムシが吸収」のサイクルを回すことによりマイナスエミッションになるのではないか?
  • (回答者)「ミドリムシの死滅率<ミドリムシの増殖率」の場合、ミドリムシ培養槽が満杯になるまでは一時的にマイナスエミッションの状態になるかも知れないが、培養槽の容量を超えてミドリムシが増殖すると余剰のミドリムシが生じ、結局その余剰のミドリムシの炭素は大気中に還流する。
  • (ブログ主)自分は、植林によりCO2マイナスエミッションが出来るなら、熱帯雨林の数十倍のCO2を吸収・固定化出来るミドリムシなら更に大きなマイナスエミッションが出来ると考えていたが、ミドリムシの増殖は植林と異なり「培養槽」を要することを考慮に入れていなかった。ミドリムシで大きなCO2削減をするには、世界中に巨大なミドリムシ莫大な量の培養施設を設置する必要があるのだが、それは果たして可能なのか?

以上のようなやり取りにより、「ミドリムシ・サイクルにより、CO2マイナスエミッションでエネルギーを取り出す」というアイディアはあまり実現性がないという結論に達した。

さて、ユーグレナ社は世界中に巨大なミドリムシ培養施設を限りなく設置することを考えているのだろうか?また、どの程度の数のミドリムシ培養施設を設置すれば意味のあるCO2削減が達成出来るか検討しているのだろうか?

なお、ミドリムシによるCO2固定は、マイナスエミッションでなくゼロエミッションでも良いという考え方もあり、それで構わないと思う。しかしミドリムシをCO2ゼロエミッションに利用するにしても、数量的に意味のある(世界のCO2削減に十分寄与する)ゼロエミッションを達成するには莫大なミドリムシ培養施設を設置する必要があることは言うまでもない。

Yahoo知恵袋での回答者の中には、ユーグレナ社の商売方法そのものに問題があると指摘した人も居たが、その件についての考えは別記事に書くことにしたい。


ブログランキングに参加しています。 ぜひ『ぽちっ』と押してやってください。 

スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

都 雄次

Author:都 雄次
専門はエネルギー経済の数値シミュレーションです。バハイ教という日本ではあまり知られていない宗教の信徒です。バハイ教はイランで発祥した宗教ですが、「人間はすべてひとつの地球家族に属する」「科学と宗教の調和」「男女の同等性」という先進的な教義を持っています。本日記では社会科学と宗教哲学を用いて地球環境問題と人間の心の問題を論じます。

記事一覧

カレンダー(月別)

09 ≪│2019/10│≫ 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -