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パリ協定は地球温暖化を解決するか(3):長期CO2排出ゼロについて

「パリ協定は地球温暖化を解決するか(2)⇒[記事へ]」では、日本の地球環境政策に影響力を持つ山口光恒氏のパリ協定への見解を紹介した。


参考にした山口氏の論文は http://eneken.ieej.or.jp/data/6794.pdf 「長期ゼロエミッション社会の構築に向けて(2016年)」である。


山口光恒氏のパリ協定に対する見解は:


(1) パリ協定の「工業化以降の気温上昇を2℃以下にする」という目標は実現困難である(2100年までに大幅な負のCO2排出を必要とするため)


(2) 「長期CO2排出ゼロ」がパリ協定の2℃目標に替わる目標となる


とまとめられる。


では、なぜ「長期CO2排出ゼロ」が2℃目標に替わる目標になるのだろうか?


それは簡単に説明すると、こういうことである:CO2は海洋に吸収される。このため、CO2排出をゼロにすると、大気中のCO2濃度は減少に向かう。地球環境に危険を及ぼす温暖化が起きる前にCO2排出をゼロにできれば、危険な温暖化は回避できる。


「長期CO2排出ゼロ」を目標にする場合、パリ協定の2℃目標を採用するよりもCO2排出削減を将来に先送りすることが出来る。これは途上国のCO2排出が増加の一途をたどり、かつ先進国のCO2排出削減も思うように進まない現状をかんがみるとより現実的な目標であると山口光恒氏は考えるのである。


「長期CO2排出ゼロ」を目標にするのは問題点もある。一番の問題点は「長期CO2排出ゼロ」がCO2排出をゼロにするエネルギー技術を開発しなければ成立しない、ということである。現時点の自然エネルギーでは経済水準を保ちつつCO2排出をゼロにするのは不可能である。「長期CO2排出ゼロ」を目標にするとは、すなわちCO2無排出の革新的エネルギー(核融合等)が開発されることに賭けることでもある。もし、そうした革新的エネルギーの開発に失敗すれば、地球は壊滅的な被害を被ることになる。こうしたことを考慮するならば、2℃目標の方がより安全とも言える。


もう一つの問題点は、世代間公平の問題である。「長期CO2排出ゼロ」という目標は「気温上昇を2℃以下にする」という目標に比べ、より将来世代にツケ(温暖化被害と大きなCO2削減)を回すと考えられる。将来世代にツケを回す極端な考えとしては、21世紀前半にはCO2排出を増やし、その後に大きなマイナスエミッションを実現して温暖化被害を防ぐという発想がある(もっとも、マイナスエミッションを実現する技術が開発可能かどうか不明である)。しかし、「将来世代にCO2削減を押し付ける」発想は現代人のエゴとしか言いようがないのではないだろうか。危惧すべきは、この発想が世界レベルで研究者のコンセンサスになりつつある事である(この点、パリ協定は良心的と評価出来る)。


政策的な観点で考えると、パリ協定の「気温上昇を2℃以下にする」がそれ自体で政策目標であるのに対し、「長期CO2排出ゼロ」はそれだけでは政策目標にはならない。例えば、2200年にCO2排出ゼロを達成するのではあまりに遅すぎで、ずっと早い時期にCO2排出ゼロを達成しなければ温暖化被害は避けられない。では、どの時点でCO2排出ゼロを達成すれば良いかと言うと、それは現時点では明確ではない(排出量と気温上昇の関係に科学的な不確実性があるため)。つまり、「長期CO2排出ゼロ」と「それを△△年までに達成する」をセットにしなければ政策目標にならないのだが、その「△△年」が分からないのである。


以上を総合して考えると、山口光恒氏が薦める「長期CO2排出ゼロ」目標と、パリ協定の「気温上昇を2℃以下にする」目標のどちらがより妥当な政策目標であるかについては、何とも言えない。文献によっては「気温上昇を2℃以下にする」場合は21世紀中にCO2排出をゼロにする必要があるという情報もあり、そうした情報も併せて政策目標を検討しなければならないだろう。「長期CO2排出ゼロ」が実現可能ならば21世紀前半は多少のCO2排出増加も許容されるというのは現時点の我々には魅力的な目標に映るが、上記のように議論はそう簡単ではない。


この問題については、今後も折を見て考察したい。



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コメント

日本にとって京都議定書が失敗どころか大失敗であったことは既に歴史が証明している。日本人は失敗を失敗と認めずに失敗から学ぶことをしないのが悪癖である。京都議定書大失敗の反省を生かせと声を大にして言いたい。当時の政治家や科学者、研究者、環境省と外務省は自らの過ちを認め、国益を損ねたことを真摯に謝罪すべきである。それが京都議定書大失敗という結果に対するせめてもの償いであろう。当時の関係者は自分たち個人の面子のために、日本国民全員に合計1兆円相当の経済的被害を与えたことを反省しているのか。のうのうと天下りでもして私腹を肥やしたのであれば、許しがたいこと。

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都 雄次

Author:都 雄次
専門はエネルギー経済の数値シミュレーションです。バハイ教という日本ではあまり知られていない宗教の信徒です。バハイ教はイランで発祥した宗教ですが、「人間はすべてひとつの地球家族に属する」「科学と宗教の調和」「男女の同等性」という先進的な教義を持っています。本日記では社会科学と宗教哲学を用いて地球環境問題と人間の心の問題を論じます。

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